店舗の居抜きとスケルトン、どっちを選ぶ?|費用・工期の差と、契約前に見るべき“見えない部分”を職人が解説

オリジナルのアイアン格子を設けた大開口と古材の床の写真スタジオ(大阪市中央区)|株式会社TEAM-Rの施工事例

「居抜きなら安く開業できる」「スケルトンなら自由につくれる」。店舗やカフェの物件探しでよく聞く言葉ですが、半分しか合っていません。居抜きが安くなるのは残っている設備がそのまま使えるときだけ、スケルトンが自由なのは建物側の制限の範囲内だけだからです。

この記事では、堺市西区に自社ショールームを構える株式会社TEAM-R(大阪府堺市のリフォーム・リノベーション会社)が、居抜きとスケルトンの費用・工期の差と、契約前に必ず見てほしい場所を職人の目線で解説します。

この記事の結論|先に要点

  • 設備(水まわり・空調など)がそのまま使える理想的な居抜きなら、スケルトンより費用が約3〜5割安く、工期が約2〜4週間短くなるケースがあります。ただし物件次第で一概には言えません。
  • 前と同じ業種なら居抜き、違う業種・一からお店らしくつくりたいならスケルトンが基本です。
  • どちらも失敗の原因は「見えない部分」。居抜きは床下の給排水、スケルトンは建物全体のインフラとビルの管理規約です。
  • 契約前なら、代表・潮が物件の下見に無料で同行します。

1. 居抜きとスケルトン、そもそも何が違う?

大阪市中央区の写真スタジオのリノベーション工事後。|株式会社TEAM-Rの施工事例

居抜きに何が残っているかは物件ごとに違い、「使えるものが残っている」と「撤去しなければならないものが残っている」は表裏一体です。スケルトンは自由度が高い反面、配管・配線・空調を新しくつくる必要があります。

中間のルートもあります。居抜きで借りた物件を解体してスケルトンに戻し、一からつくるやり方です。TEAM-Rが手がけた大阪市中央区の写真スタジオがこれで、前はオフィスだった内装を解体してから写真スタジオをつくりました(下の写真が工事前です)。考えるべきは「どちらの物件か」だけでなく、「残っているものを使うか、壊すか」です。

大阪市中央区の写真スタジオの工事前。オフィスの内装が残った状態|株式会社TEAM-Rの施工事例

店舗内装全体の流れや坪単価の目安は、堺市で店舗・カフェを開業する内装ガイドにまとめています。

2. 費用と工期は、どのくらい変わる?

堺市西区・TEAM-Rショールームの改装前。スケルトン状態の店舗|株式会社TEAM-Rの施工事例

ただし、費用も工期も残された設備の状態に大きく左右されます。正直な結論は「物件次第で一概には言えない」です。

TEAM-Rの4事例を「工事前の状態」で並べると

事例(完了)工事前の状態費用工期金額の前提
堺市西区・自社ショールーム(2026年6月)シャッターの閉まった空き店舗。中はスケルトン約300万円約1ヶ月TEAM-R自身の店舗(自社で設計・施工)
大阪市中央区・写真スタジオ(2024年1月)前はオフィス。内装をTEAM-Rが解体してスケルトンに約900万円約3ヶ月解体費・設計費を含む
大阪市東淀川区・猫カフェ(2024年2月)前は別のテナントが入っていた物件約250万円約2週間工事分のみ(設計・デザイン費は別)
大阪府高槻市・猫カフェ(2024年4月)もともと猫カフェだった物件約300万円約1ヶ月工事分のみ(設計・デザイン費は別)

4件は広さも工事の中身も違うので、この表から「居抜きは◯割安い」とは読めません。 読み取ってほしいのは2点です。

1つめは、金額に含まれるものが違うこと。 写真スタジオは解体費・設計費込み、猫カフェ2件はデザインチーム経由のご依頼で、TEAM-Rの工事分だけです。事例の金額を比べるときは、何が含まれているかを必ず確認してください。

2つめは、工期を分けたのが「どこまで触ったか」だったこと。 高槻市は同じ業種(猫カフェ)の物件なのに、東淀川区の倍かかりました。間取り変更や建具の入れ替えがあり、造作の点数も多かったためです(猫カフェの内装の記事参照)。居抜きかどうかより、「何を残して、どこまで触るか」で工期は決まります。

備考

住宅を含む6事例すべての「金額の前提」と読み方は、施工事例の金額の読み方にまとめています。

3. 居抜きとスケルトン、どっちが向いている?

スケルトンから天井を解体し、デッキプレートを現しにした撮影スペース(大阪市中央区)|株式会社TEAM-Rの施工事例

前と同じ業種で開業するなら居抜き。前と違う業種で開業する、または内装を一から自分のお店らしくつくりたいならスケルトン。 これがTEAM-Rの基本の考え方です。

居抜き向きスケルトン向き
業種前と同じ(例:ラーメン店→ラーメン店)前と違う(例:飲食→アパレル)
優先したいこと初期費用と開業までの期間を抑えたい一から自分のお店らしくつくりたい

別業種の居抜きが高くつくのは、撤去するものが多いからです。 飲食店の居抜きには厨房機器・排気ダクト・シンクまわりの給排水・カウンターなどが残っていることが多く、アパレルや物販にはどれも不要です。厨房の床が防水や段差のある仕様なら、ならす工事も要ります。そのぶん手間とコストと時間がかかります。

スケルトンの強みは計画の立てやすさです。 配管・配線・照明の位置をゼロから計画でき、既存をどう活かすか・隠すかを考えなくていいぶん、図面どおりに進めやすくなります。写真スタジオのように天井を解体してデッキプレート(天井の鋼板)を見せるデザインもしやすい。ただしゼロからつくるので、同業種の居抜きのような「安くできる」メリットはありません。

4. 居抜き物件は、契約前にどこを見ればいい?

居抜き物件の現地の様子。前のお店の設備が残った状態

TEAM-Rが居抜き物件で確認しているのは、次の7か所です。

見る場所確認すること
給排水位置・勾配(水が流れる傾き)・水漏れの跡
空調(エアコン)年式・動作
電気容量・分電盤
ガス容量・配管のサイズ
排気ダクト・換気扇状態
厨房の防水層状態
床・壁・天井傷み

いちばん危ないのは床下の給排水です。 表面がきれいでも、配管の勾配が適切でなかったり水漏れがあったりすると、コンクリートの床をすべて解体してやり直す大工事になります。見えない部分のトラブルは数百万円単位の予想外の出費につながります。

次に注意したいのは空調です。 業務用エアコンを全部交換すると、本体代に加えてクレーンでの搬入費や足場代がかかり、一気に予算を圧迫します。

なお、残っている設備を前のテナントから買い取るのか、リース品なのかといった契約まわりは、施主様と不動産会社のあいだで決まる話で、TEAM-Rは工事の立場なので関わっていません。設備を「使える前提」で計画する前に、不動産会社に確認しておくと安心です。

5. スケルトンなら、何でも自由につくれる?

スケルトン状態の店舗物件画像

スケルトンで困りやすい3つのインフラ

  • 電気・ガスの容量不足:テナント内ではなく「建物全体」の容量がいっぱいで、追加で引き込めないことがあります。熱源を多く使う飲食店や美容室では致命的です。
  • メインの排水管(縦管)が遠い:水が流れる勾配をつくるために床を数十センチ底上げすることになり、費用がかさむうえ天井も低くなります。
  • 排気ダクトを出すルートがない:ルートがない、あるいは「外壁にダクトや室外機を出してはいけない」という管理規約が後から見つかり、希望の業態がつくれないケースです。

ビルのルールで内装が縛られることは「よくある」

ビルの管理規約や消防法による制限は、店舗の内装工事では日常茶飯事です。

  • 指定業者の縛り(B工事):防災設備(スプリンクラー・火災報知器)や空調は、ビル側の指定業者しか施工できないことが多く、相見積もりが取れないため割高になりがちです。
  • 外観・看板のルール:窓に貼るシートの面積、使える色、袖看板の可否などが決められていることがあります。
  • 工事時間の制限:「音の出る解体工事は夜間・休日のみ」と指定される物件も多く、深夜割増などが加わり工期も延びます。

写真スタジオのビルにも「窓に非常口を設ける」というルールがあり、オリジナルのアイアン格子の一部に丁番を仕込んでドアとして開閉できるようにしました。こうしたルールは契約後には変えられないので、「目に見えない制限」は契約前にプロの目線でチェックすることが必須です。 保健所・消防の許可の要件は業種と管轄で変わるため、管轄の窓口でも最新の内容を確認してください。

6. 退去するときの「スケルトン戻し」は、いくらかかる?

店舗の解体工事の様子の画像

坪あたり約5万〜10万円が一般的な目安です。 厨房設備やダクトなど解体するものが多い飲食店や、「工事は夜間のみ」と指定されているビルでは、処分費や割増の人件費がかさみ、坪10万円を超えることも珍しくありません。単純計算で、10坪のお店なら約50万〜100万円です。

一方で、内装の中身によっては大家さんから「次も使えそうだから、スケルトン戻しはしなくていい」と言ってもらえる場合もあります。この話は入居時(賃貸契約の段階)と退去時の両方で、大家さん・管理会社としておくのが実務です。スケルトン戻しの工事もTEAM-Rで対応できます。

7. 造作が得意なTEAM-Rが「壊さずそのまま使って」と言うのは、どんなとき?

堺市西区にあるTEAM-Rのリノベーション店舗の造作ベンチの画像

同じ業種で、厨房機器や空調がまだ新しく、動線にも大きな問題がない居抜きです。 この場合は無理に壊してつくり直すより、そのまま使い、お客様の目に触れる表層(壁・床・照明・装飾)にだけお金をかけるほうがいい、とお伝えしています。

「お客様が見る部分にかけて、従業員しか見ない部分は抑える」は、店舗内装でのTEAM-Rの一貫した考え方です。住宅で「お風呂は造作するとコスパが悪すぎるので既製品一択」とお伝えしているのと同じく、造作の会社だからこそ、造作しないほうがいい場面を正直にお伝えします。 なお「動線に問題がない」は大事な条件です。店舗でつまずきやすいのは動線だからです(リノベで後悔するのは“やり直せない4つ”だけ参照)。

残っている内装も、ひと手間で生まれ変わります。 骨組みがしっかりしたカウンターや棚なら、表面を塗装したり、板や化粧シートを張り直したりするだけで印象がガラッと変わり、全部つくり直すより安く、工期も短く済みます。TEAM-Rが得意な「安い材料にひと手間かけて見せる」やり方と同じ発想です。上の写真の窓枠格子も、木でつくって黒く塗装したアイアン風で、近くで見ないと木だと気づかないほど。こちらは新しくつくったものですが、考え方は居抜きの既存内装にもそのまま使えます(造作が“既製品と同じ金額”でできるカラクリ参照)。

よくある質問(FAQ)

居抜きとスケルトン、どちらが安いですか?

設備がそのまま使える理想的な居抜きなら、スケルトンより約3〜5割安く、工期も約2〜4週間短くなるケースがあります。ただし残っている設備の状態次第で、一概には言えません。

居抜き物件でいちばん注意すべきところは?

給排水の位置・勾配・水漏れの跡です。床下の配管に問題があると床を解体してやり直すことになり、数百万円単位の出費につながります。次点は空調の年式・動作です。

スケルトンなら、どんな業態でもつくれますか?

つくれない場合があります。建物全体の電気・ガスの容量不足、メインの排水管が遠い、管理規約で外壁にダクトや室外機を出せない、といった制限があるため、契約前の確認が必要です。

退去時のスケルトン戻しの費用は?

坪あたり約5万〜10万円が一般的な目安です。解体するものが多い飲食店や夜間工事指定のビルでは、坪10万円を超えることも珍しくありません。

物件の契約前に相談できますか?費用は?

できます。株式会社TEAM-R代表の潮が物件の下見に同行し、居抜きを活かせるか、スケルトンにすべきかを一緒に確認します。下見の同行は無料です。

まとめ

  • 理想的な居抜きなら費用約3〜5割減・工期約2〜4週間短縮のケースもあるが、物件次第。
  • 同じ業種なら居抜き、違う業種・一からつくりたいならスケルトン。
  • 費用と工期を本当に決めるのは「何を残して、どこまで触るか」。
  • 居抜きは床下の給排水と空調、スケルトンは建物のインフラとビルのルール。失敗の原因はどちらも「見えない部分」。

見えない部分は、契約してからでは変えられません。株式会社TEAM-Rでは、代表・潮が店舗物件の下見に無料で同行し、給排水・空調・建物側の制限までプロの目で一緒に確認します。対応エリアは堺市全域(堺区・中区・東区・西区・南区・北区・美原区)、大阪市全域、松原市、和泉市、泉大津市、高石市、羽曳野市、大阪狭山市、富田林市、河内長野市です。

堺市西区のショールームは、スケルトンの空き店舗からTEAM-Rが自社でつくった店舗の実例です(ショールームができるまで)。店舗内装の費用や流れは堺市で店舗・カフェを開業する内装ガイドをご覧ください。

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潮 亮輔(うしお りょうすけ)/株式会社TEAM-R 代表取締役

2011年に内装業界へ入り、フローリング職人として新築・リフォーム現場で約13年携わる。2018年に個人事業主として独立し、2023年7月に株式会社TEAM-Rを設立。内装工事を得意とし、店舗・マンション・戸建てのリノベーションを数多く手がける。「個性を大切に」を信条に、お客様との対話を何より大切にする職人肌の代表。